第二章 女賊 紅蜥蜴

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夜も更けて 神宿のとあるバーにて 女王のようなアイマスクをつけた 肌も露な女が 店の中央で 紳士と胸を合わせて 踊っています 紳士もまた 目が隠れる仮面をつけて いや この店内 皆 仮面舞踊会もかくやと言う雰囲気で ムーディーな パイプオルガンの音に合わせて 踊っています 「紅乃(べにの)よ 今日もまた美しい顔を拝顔できぬのかい?」 「いえいえ私のようなものが伯爵さまに お顔を見せるなんて 滅相もございませぬゆえ このままで」 「これ 伯爵など言っては困るぞ 誰が聞いているかわからぬゆえになあ」 「これは申し訳ございません と言っても ここでの正体は誰も証さぬのがしきたりですから 」と言っては 胸の谷間が見える薄い水着のような姿でしなだれかかる女 おおこれは 先程まで 女工さんの姿をしていた 紅蜥蜴ではありませんか なんたる 妖艶な姿に変貌しているのでしょうか? どうやら ここは 彼女の居場所 いや アジトの一つのようです 何人も 黒い服を着た若い男たちが出たり入ったりしては 大切なお客様を 迎え入れております パイプオルガンの音が鳴り止み 皆 テーブルへと戻っては グラスを片手に アルコールを摂取しています 「本日ここに集まっていただいたのは 某賭場にて手に入れたこちらをおーくしょんいたしたいと思いまして では」と なんと いつ取り出したのか  ほんの数時間前に 奪って来た宝飾品を いくつも 各自のテーブルへと 見せに出向いています 「こちらは 皆様が持つような由緒正しきものではありませんが 江戸より続く 商家から出たものです なかなか粋なものもございますので お手に取ってご覧ください」 なんと 皆 それを見ては 目を離せなくなっていました。
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