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暴漢に襲われたとしても、自らの手で切り捨てるのではなく、護衛に任せて背を向けるのも人の上に立つ者の義務だ。
教養として武芸を嗜むが、それはあくまでも試合用でしかない。
だからウィリアムが言うことは正しかった。
正しいと理解する反面、悔しくもあった。
自らを守る事すら許されず、目の前で最愛の者が血を浴びる姿を黙して見ていろと――要約すればそういう意味なのだ。
「だが……」
「エリヤ、おまえは『国王』なんだ。頂点に立つ以上、我慢して貰う。これは譲れない」
言い聞かせるウィリアムはにっこり笑い、腰掛けていた机から下りた。長い髪が手の中から消える滑らかな感触に、エリヤが慌てて立ち上がる。
「だけどな……今度からちゃんと話すよ。隠し事されると嫌なんだろ?」
柔らかい笑みと口調に、それ以上何も言えなくなった。
国を支える『王族』としての役目を放棄は出来ない。
捨てられない以上、付き合っていくしかないのだろう。その中で国民に不安を与え、動揺させる因子は取り除かなければならないのだ。
その汚れ役を担ってきたのが、代々の執政や大臣達であった。
「必ず話せ」
「ああ、オレはエリヤの『モノ』だから『裏切らない』」
言い切ったウィリアムの真剣な表情に、エリヤは覚悟を決めた。
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