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2-1.薔薇の下の秘密
豪奢な宮殿の中庭で、執政たる青年は目を細めた。
幼い国王を補佐する立場にいる彼は、静かに頷いて書類にサインを施す。サラサラと慣れた名前を記して、最後に印を押した。
「では、お預かりいたします」
「頼む」
鷹揚に応じたウィリアムに頭を下げ、役人が下がった。それを待っていたように、薔薇を愛でていた少年が振り返る。
甘えた仕草で両手を伸ばすのを確認すると、先ほどまでの厳しい表情が嘘のように顔を綻ばせ、三つ編みを揺らすウィリアムが歩み寄った。
「ウィリアム」
強請る声に促されるまま、そっと細い体を抱き上げる。
年齢より小柄なエリヤは、艶やかな黒髪をウィリアムの首筋に埋めて腕を回した。
しっかりと抱き着く存在を愛しいと思いながら、ウィリアムは東屋に設えられた長椅子に少年を横たえた。
三つ編みの先を握って離さない幼い仕草に苦笑しつつ、長椅子の足元に膝をつく。
ウィリアムの身を包む上質な服は、特権階級であることを示していた。本来国王の側近として、唯一国政に口出しを許された執政は、政治の面から言うなら『国王の代理たる権限』まで有する。
その身分を与えた少年の前に跪き、青紫の瞳で主を仰ぎ見た。
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