2-4.濁った泥を飲み干す覚悟

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 静かに頷くことで、その決意を示すエリヤの姿に、痛々しさを感じてウィリアムは唇を噛み締める。   誰より強さと才能を持ち、本来ならもっと自由に生きられただろうに……幼くして両親を失ったばかりに、国王という重責を15歳で背負わされた。  背の翼を毟り取られたように思えて、そんなエリヤの身を少しでも軽くしてやりたくて、執政の権限ぎりぎりの決断を下したのだ。  『国王』という地位は、まるでエリヤを縛る鎖だ。  幼い肢体を拘束し、自由で透明な心を濁らせ、羽ばたこうとする魂を雁字搦めにした。 「……いつか……」 「必ず叶えてやる」  誰も知らない、2人だけの約束を肯定して――エリヤは嬉しそうに双頬を笑み崩した。  テラスからの風が部屋を吹き抜ける。  生臭い謀略や、醜い欲による画策を清めるように……そして、空で輝く太陽の強い光が地上に降り注ぐ。  人間の愚かさ、醜さを嘲るように、宮殿の窓から見える景色はどこまでも澄んでいた。     
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