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陽に焼けない為、白くて柔らかい肌の手が伸ばされる。ふわりと触れる指先が、前髪を浚い、頬を滑り、唇で止まった。
意味ありげな笑みを向けられ、ウィリアムは静かに目を伏せる。
「このような場で……」
「俺の願いを無視するのか?」
宮殿の中庭は、四方をぐるりと囲まれた形から誰が見ているかわからない。そう告げて自制を促す執政に、我が侭な国王は不遜な物言いをした。
困らせるのは先刻承知、それでも欲しいと手を伸ばす。その為の方法を教えてくれたのは、戸籍上は存在しない年上の従兄弟である彼なのだから……。
「願い、ですか?」
その程度?
意地悪げに問われ、いつの間にか逆転した立場に気づかされた。
その外交手腕がウィリアムの有能さの証なのだと知っていても、何となく気に入らない。
だから子供なのだ。自覚していても、エリヤは直そうと思わなかった。
直す必要がない、己の立場は誰より理解している。
こう言えばいい。
「ならば命じる」
「御意」
お気に入りの青紫の瞳が優しく感情に溶け、整った顔が近づいた。
反射的に目を瞑ったエリヤの手を捧げ持ち、軽く唇を押し当てる。続いて、頬に触れるだけのキスを落とし、最後に掠めるように唇を奪った。
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