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「ドキュメント・新興宗教」    (序)現在、日本には約二十万団体の新興宗教がある。私もかつてその中の一つである「千乃正法」という団体に所属していた。このことについては後述するが、二千人ほどの群れで、昔ワゴン車にグルグルマークのステッカーを貼って白装束を着て全国を放浪し、「オウムの再来か」と騒がれたことがあった。この「千乃正法」は正確には財団法人であって宗教法人ではないが、きちんとした体系的な教義を持ち、その内容から「宗教」と呼んでも間違いはないだろう。自分はこの団体をソ連が崩壊する頃に辞めて、その後にクリスチャンになった。残念ながらワゴン車で全国を放浪したりはしていない。  私が宗教に興味を抱いたのは小学校6年生の頃からで、既にこの頃より「宗教遍歴」を行っていた。だから、ドキュメントと言っても、実際は自分の体験談である。  一九九五年にオウム事件(地下鉄サリン事件)が起こり、日本中を騒がせた。その時に人々の口にしたのは「宗教がこんな事件を起こすのか?」「宗教は怖い」「なぜ高学歴の人間がオウムに騙されたのだろうか?」と言った言葉であった。しかし、宗教遍歴を数々やってきた自分からすれば、これは何もおかしなことでも何でもない。文字通り「宗教は怖い」ものなのである。現在の私はキリスト教徒であるが、正直に言うと「キリスト教とは恐ろしい宗教」なのである。独自の終末観を持ち、人類の発生から終焉までが聖書に書かれているのだ。だからローマ時代は一種の「カルト」と思われて弾圧された。それが本来のキリスト教だ。  また、私には宗教に「騙される」人間の気持ちが痛いほどわかる。それは、この世なんかは「しらふでは生きていけない」からだ。そして、そのことに気づいた者が宗教に走ったとしても奇異なことでも何でもない。オウムに高学歴の人間が多かったというのも頷ける。彼らは現在の受験システムや社会システムに疑問を抱き、何か「世界を変えてくれるもの」、「ハルマゲドンを起こしてくれるもの」を欲していたのだ。因みに、「ハルマゲドン」は新約聖書の「ヨハネの黙示録」に登場する世界最終戦争の起こる場所である。
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