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そこでは、勇者の御一行と数多の騎士、人の伸長の倍はあろう魔人が何十人と戦っていた。数では人間側が勝っていはいるが、こうして見ている間にも騎士と思われる人たちが次々になぎ倒されていく。
それに魔人は一向に数を減らしていないように見えた。
「負け戦だな。 不幸な物語だ」
「そんな悠長なこと言ってる場合ではありません! 助けに行かないと!」
「おい待て!」
テイラは、丘を滑って降りようとする。だが、それを許さないシュヴィがテイラを魔法で浮かせ、動きを止める。
「ちょっと! 話してよ! じゃないとあの人達が―――」
「行っても無駄だ。 お主はここの物語の人ではない。 故に干渉することはできないのだ」
「え……」
「初めにも言ったろ。 ここは物語の保管庫の記録。 偽物の世界だと」
テイラが落ち着くのを確認すると、シュヴィは元の位置に彼女を降ろす。
自分の世界ではないのに悲しみに満ち溢れてしまうテイラ。彼女もまた国を背負う立場を継ぐもの。他の民であろうと無下に扱われていることが見るに堪えないのだ。
だが、そんな彼女にシュヴィは驚くべき話を持ち掛ける。
「だがな、この世界を作り上げている電子というものは少し特殊でな。 改変することができるのだよ」
「改変?」
「そうだ! そして改変できる者はここにいる! 運がよかったの~」
これまでにないほど笑顔を見せるシュヴィに、テイラは希望を見出す。
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