のばらとうらら 第8章

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のばらとうらら 第8章

パーティの日程が決まったので、後は招待客に連絡を入れなければならない。 後はパーティの内容をどうするかよね。 何か目的がなくちゃ。 LIVEパーティっていうのはどうかしら。面白そうじゃない? でもグランドピアノしかないので、他の楽器を使うとなると、 機材や音響の必要も出てくるからどうしようかしら… そうだわ!ロックシンガーのさくらに相談してみましょう! フェイスブックで繋がったことだし。 さくらも来てもらえたら、いいのだけど九州からだし、難しいかしら… でも交通費をこちらで持ったら、 もしかしたら了承してもらえるかもしれないわね。 えっと、さてフェイスブックからメールを送るのは どうしたらいいのだったかしら。 「うらら、玄関のセキュリティーがオフになってたわよ!危ないじゃない。 ロミさんは、いないの?」 「あら、のばら、ちょうどいい所に来たわ。 さくらにフェイスブックからメールを送ってみたいんだけど どうやっていいのかわからなくなったのよ。 教えてくれない?というか、送ってくれない?」 玄関のセキュリティが気になりながら、うららのパソコンに向かう。 「IDとパスワードを教えて」 「えっ?IDとパスワード? 何だったかしら・・」 「IDとパスワードをどこかに書き留めてないの? どこかにメモしておいた方がいいわよ。 でも、パソコンの中にメモを残すのは危険だからだめよ」 「何にしたのか忘れてしまったわ。困ったわ、どうしたらいいかしら・・」 「ログアウトはしてしまったのね。メールアドレスはわかるから、 パスワードだけもう一度考えて」 さすがにパソコンを使って仕事もしているだけあって、 のばらはとても冷静で落ち着いていた。 「じゃこれでお願い」 うららがパスワードを書いたメモをのばらに渡した。 「このメモ無くさないようにね」 「ええ、わかったわ。ありがとう、のばら」 こういった事はのばらにとっては想定内の事だった。 「それで、どんな内容を送ればいいの?」 「来週末に行うパーティをLIVEパーティにしようと思うの。 今まではジャズのLIVEしかやってこなかったけど、 この前さくらのLIVEに行って、ロックな感じの音楽もいいなと 思ったから相談しようと思って」 「自宅でロックは難しいんじゃない?」 「でも、庭にちょっとしたステージは準備できると思うの。 機材とか音響がよくわからないから それを相談してみようと思って。 室内ではジャズを、屋外でロック演奏するパーティを企画できないかしら」 一般家庭では到底無理な企画だけど、うらら邸なら可能かもしれないと 思いながらも、関わる人たちが大変だろうなとのばらは案じた。 うららのフェイスブックにログインすると、 友達申請通知が100件近く来ていた。 そんなに知り合いがいたことにちょっとびっくりした。 のばらは、多くの付き合いがある方では無いので、 繋がっている人数はたかが知れている。 「うらら、沢山申請来てるけど、どうする?名前読み上げようか?」 名前からしてほとんど外国人みたいだった。 「後でチェックするから、そのままにしておいて良くてよ」 本当にうららが後でチェックするのかどうかわからなかったが、 申請はそのままにして、メッセンジャーの中の さくらの名前を探した。 さくらは、SakuraSakuという名前で登録していた。 のばらもさくらの友人なので、こんなことだったら、 のばらのメッセンジャーから メッセージを送っても良かった。 でも今回は、のばらがうららになりきる事にした。 うららの口マネをするかのような文章を作る。 『さくら、こんにちは。先日のLIVEはとても楽しかったし、 久々に会えてとても嬉しかったわ。 ところで、来週末我が家でホームパーティを 開催することになったんだけど、さくらに相談したいことがあるの。 今回のパーティの趣旨は、LIVEパーティでね、 今までは演奏はジャズだけだったんだけど 今回は初企画で、ロックの演奏もできないかしらと思ったのね。 場所は問題ないの。我が家の庭は結構敷地もあるし、 100名ほどなら余裕でいらしていただけるし 近所の方々も招待するので、騒音の心配もないのよ。 ただ、演奏してくださるミュージシャンの方々や 音響など機材がさっぱりわからなくて。 お金の問題なら心配なさらないでね。必要経費は全てお支払いします。 ギャラは、幾らお支払いしたらいいかわからないから、 そのあたりも教えて頂けるとありがたいわ。 もしご都合会えば、さくらにも来て歌ってもらえたら嬉しいのだけど、 如何かしら?』 文章を打ってるだけで、何となくうらら気分になっていた。 この文章を読み上げると、うららが 「あら、のばらったら、わたくしこんな感じでいつもしゃべってる? 嫌だわ~」 「うらら、自分で気づいてないの?いつもこんな感じよ。 内容はこれでいい?」 「内容はそれで良くてよ。でも、その口調が気になるわ。 何ていうのかしら、もうちょっと手紙みたいな 感じにしてもらえないかしら?」 「最近はLINEやSNSでの投稿は、ほとんどがしゃべり口調だし、 手紙みたいな文章は、目上の方や 仕事上でしか使わないものよ」 「そうなのね。いいわ、じゃそれでお願い」 「じゃこのまま送信するわね」 のばらは、送信ボタンを押した。 「誰を招待するのか決まってるなら、 フェイスブックでイベントページを作って送るわよ」 「イベントページ?そんな事もできるのね。 でもやはりわたくしは郵便で招待状を送りたいわ」 「来週やるんでしょ?返事を送ってもらったりする手間を考えたら、 せめてメールで連絡できる人に絞った方がいいわよ」 うららは、パーティを開催する時は結婚式で送るような 招待状をいつも郵便で送っていた。 確かに日が迫っていたので皆予定が決まってるかもしれない。 しかもミュージシャンの手配など出来るのかどうかわからなかった。 「招待状みたいなメール添付できる画像を作ってあげるから、 それで送ったら?」 「のばら、持つべき者は双子の妹ね。ありがとう、のばら」 ついうららの為に何でもやってしまうのだった。 「家のパソコンにソフトが入ってるから、 一旦帰って作ったファイルをまた持ってくるわ。 ちゃんと戸締りしておいてよ」 「そうだったわね。ロミさんは、買い出しに行ってるんだと思うけど、 うっかりしちゃったのかしら。注意しておくわ」 のばらを見送りにうららも玄関に向かった。 するとガタンという物音が玄関先でした。 「うらら、今の音は何?」 「何かしら、もしかしたら徹さんが帰ってきたのかもしれないわ。 一昨日から海外出張に行ったんだけど」 「海外ってどこ?」 「イギリスよ」 「一昨日行ったのに、もう帰ってくるわけないんじゃないの?」 「それもそうよね、じゃあ一体何の音かしら」 「ちゃんと戸締りしておかないからでしょ、セコムしてなかったの?」 「自宅にいる時は解除してるのよ」 ふたりで寄り添いながら、おそるおそる玄関に向かった。
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