第一章・―声優? チャラ男じゃねぇか―

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「そうですか。では、無駄に持っている三冊は、さっさと帰って古本屋にでも売ってこい」 「……な、何故」 「チャラ男さんみたいな人に無駄に保存してもらうより、一冊でも多く、僕が執筆した本を読みたいという人達の手に渡った方が、余程有意義な書籍の使用方法だからです」  二人の談義、というか、珍しい樒の長台詞に、はらはらしながら横で女性が見守っている。  そんな女性に視線を寄越した樒が言った。 「……椿(つばき)さん、彼は主人公失格ですね」 「え、えぇ……!? ダメなんですか!? 声優さんはともかく、アニメ化は決定している事項なんですよ!?」  女性……椿は再び涙目で、すがるように情けない声をあげる。 「仕方ありません。諦めて」 「諦めません! ほ、本はちゃんと先生のファンにした声優仲間とかに配ります。でも、主人公の役は絶対諦めたくないです」 「諦めて下さい」 「じゃあせめて、決めつける前に、一度だけでも声をあてさせて下さい」 「……」  関がしつこく食い下がる。
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