『甘いボイスであい・らぶ・ゆーを』

第一章・―声優？ チャラ男じゃねぇか―

「済みませんでした、先生」
　散々っぱら嫌味を言われ続け、さすがに空気を読んだ関が、物凄く縮こまりながら平謝りしたところで、ようやく樒のガラケー攻撃から解放される。
　樒はというと、関を一瞥して舌打ちするだけだ。
　しかしそれ以降は大した嫌味攻撃もなく、ガラケーのフリッパを開いて、何処やらに電話をしだす。
「もしもし、いつもお世話になっております。……。えぇ、はい。大丈夫ですか？　あ、良かったです。じゃあ今から伺いますね」
　しばし会話をして携帯を閉じると、椿に視線を向ける。
「大丈夫だそうです」
「な、何がですか？」
「ですから、スタジオ貸し切りです」
「……す、スタジオ……」
　いくら言われたからとはいえ、さっと電話をしてすっと録音スタジオを貸し切りに出来るなど、樒の行動力と資金、人脈には計り知れないものがある。
「え、声を……あてさせてくれるんですか……？」
「押し問答は僕の趣味ではありませんから」
　要するに、さっさとやって諦めさせて、早々に帰らせる気満々なのだろう。