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「樒ちゃーん、お疲れ様ー」
「どうも、お疲れ様です。この度は僕の我が儘を聞き入れて下さり、ありがとうございます」
ピンクのセーターを肩から羽織り、白いシャツにダメージジーンズを履いた、オレンジ色のサングラスをかけた軽薄そうな男性に向かい、樒が深々と頭を下げる。
「大丈夫だよー。他ならぬ樒ちゃんの頼みだもん。いくらでも使ってー」
「有り難く使わせてもらいますね」
「あ、例の声優? 知ってるよー。今売れっ子だよね?」
「あ、はい。関俊雄と言います。高畠プロデューサー、お噂はかねがね。今日は宜しくお願いします」
先刻までの軽さは何処へ行ってしまったのか、緊張気味な様子で懐から名刺を取り出しながら、男性……高畠に深々と頭を下げる。
「畏まった挨拶はなしね。今日は樒ちゃんの顔パスだから、好きなようにやっちゃって。あ、中にスタッフ揃えて待たせてるよ」
「少しだけお時間いただけますか?」
「樒ちゃんのためにスケジュール白紙にしといたから」
高畠といえばアニメ関係者のみならず、声優である関にとっても憧れの、超高名なやり手のプロデューサーだ。
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