第一章・―声優? チャラ男じゃねぇか―

14/29
前へ
/171ページ
次へ
「樒ちゃーん、お疲れ様ー」 「どうも、お疲れ様です。この度は僕の我が儘を聞き入れて下さり、ありがとうございます」  ピンクのセーターを肩から羽織り、白いシャツにダメージジーンズを履いた、オレンジ色のサングラスをかけた軽薄そうな男性に向かい、樒が深々と頭を下げる。 「大丈夫だよー。他ならぬ樒ちゃんの頼みだもん。いくらでも使ってー」 「有り難く使わせてもらいますね」 「あ、例の声優? 知ってるよー。今売れっ子だよね?」 「あ、はい。関俊雄と言います。高畠(たかはた)プロデューサー、お噂はかねがね。今日は宜しくお願いします」  先刻までの軽さは何処へ行ってしまったのか、緊張気味な様子で懐から名刺を取り出しながら、男性……高畠に深々と頭を下げる。 「(かしこ)まった挨拶はなしね。今日は樒ちゃんの顔パスだから、好きなようにやっちゃって。あ、中にスタッフ揃えて待たせてるよ」 「少しだけお時間いただけますか?」 「樒ちゃんのためにスケジュール白紙にしといたから」  高畠といえばアニメ関係者のみならず、声優である関にとっても憧れの、超高名なやり手のプロデューサーだ。
/171ページ

最初のコメントを投稿しよう!

125人が本棚に入れています
本棚に追加