第一章・―声優? チャラ男じゃねぇか―

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「さ、やっちゃう、樒ちゃん?」 「はい」  トントン拍子に話が進み、最早アフレコどころではない緊張っぷりを見せる関の肩を、樒が軽く叩く。 「チャラ男さん、見せてくれるんですよね?」 「は、はい。魅せてやります……よ」  がっちがちに固まった様は、既に声優とは言い難い素人同然の言動で、樒が呆れた表情で続ける。 「で、どの場面に声をあてるつもりで?」 「あ、あの。騎士団長を勤める主人公が、一度は裏切られた、憧れの先輩騎士を赦す場面です」 「……一番難しい場面を選びましたね」 「樒ちゃん、決まった?」  それで会話が一段落したと判断したのか、スタジオ内へと促しながら、高畠が割り込んでくる。 「はい。では、中に入りましょう」 「が、頑張ります」 「ボクも見るから、頑張ってねー」 「関さん、私も応援してます」  高畠に続き、樒と関、そして椿もスタジオ内に入る。  中には高畠の言う通り、スタッフが勢揃いしていて、全員がこちらを見るなり挨拶をする。
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