123人が本棚に入れています
本棚に追加
「樒先生、お久し振りです」
「こんにちは、樒先生」
等々、皆と知り合いのようで、樒が軽く挨拶に応えた後台本が手渡される。
「樒ちゃーん、こ・れ。急ごしらえで悪いけど、言われた台本だよ」
「ありがとうございます」
関にも渡されたので、ページを捲って見ると、そこには自分がたった今指定したシーンが、台本として描かれていたのだ。
「え。……これ。何で……」
「指定してくるならこの場面だと確信していたので」
驚く関を尻目に、何でもない事のように答えるのに、更に疑問がぶつけられる。
「あの……。それは分かりましたけど、何で先生もスタジオ入りを……」
「何故って……。この場面、チャラ男さん一人で出来るとでも?」
確かにそれはその通りではあるが、関はこれでも声優の端くれなので、一人二役くらいはしようと考えていた。
違和感は出るだろうが、それも可能にすれば、少しは実力を認めてもらえるだろうと勝手に決めていたのだ。
「声優って……、意外と難しいですよ?」
関が素直に感想を漏らす。
最初のコメントを投稿しよう!