第一章・―声優? チャラ男じゃねぇか―

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「樒先生、お久し振りです」 「こんにちは、樒先生」  等々、皆と知り合いのようで、樒が軽く挨拶に応えた後台本が手渡される。 「樒ちゃーん、こ・れ。急ごしらえで悪いけど、言われた台本だよ」 「ありがとうございます」  関にも渡されたので、ページを捲って見ると、そこには自分がたった今指定したシーンが、台本として描かれていたのだ。 「え。……これ。何で……」 「指定してくるならこの場面だと確信していたので」  驚く関を尻目に、何でもない事のように答えるのに、更に疑問がぶつけられる。 「あの……。それは分かりましたけど、何で先生もスタジオ入りを……」 「何故って……。この場面、チャラ男さん一人で出来るとでも?」  確かにそれはその通りではあるが、関はこれでも声優の端くれなので、一人二役くらいはしようと考えていた。  違和感は出るだろうが、それも可能にすれば、少しは実力を認めてもらえるだろうと勝手に決めていたのだ。 「声優って……、意外と難しいですよ?」  関が素直に感想を漏らす。
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