第一章・―声優? チャラ男じゃねぇか―

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「お、俺の大先輩……!」 「そうなりますね」  ずさっと後退りすると、壁に背をつけびびりまくる、 「智也さん、って、樒先生の事だったんですか……!? 確かに、智也さんの顔とか姿とか、俺、見た事ない……」 「僕は基本、世間様に対して顔出しするのは苦手でしてね」  心底嫌そうに返す声音は、本当に嫌だという気持ちが伝わってくるようだ。  樒がイコール智也だという事実には納得した関であったが、やはり頭がついていかず、未だに混乱しながら続ける。 「俺、智也さんに憧れて声優に……」 「そうですか。ありがとうございます」 「じ、じゃあ……。声優、出来るんですね」 「はい。出来ますね。余裕で」  周りは初めから知っていたのか、関の反応に目新しいものを感じているようで、感慨深く頷く者もいれば、同情の目で見詰めてくれる者もいる。 「分かりました。じゃあ、しましょう。アフレコ」 「はい。いつでも良いですよ」  台本を手に深呼吸すると、決心した様子で樒に促す。
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