第一章・―声優? チャラ男じゃねぇか―

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 それだけで充分尊敬出来る。最早多才という言葉すら樒には勿体ないのではないかと、マイクの前でちらちらと目線を遣る。 「いつでも良いですよ」 「あ、はい」  それを違う事に取ったのか、普通に先を促す樒に関の覚悟も決まる。  台本通りにいけば、まずは関が、全てを知った主人公に赦され、項垂れる先輩騎士にかける台詞から始まる。  自分の出来次第で、樒が帰ってしまうか否かが決まるかも知れない。  心してかかろうと、大きく息を吸い目をとじた。 「……顔を上げて下さい。スコール、私は貴方の帰りを、ずっと待っていたのです」 「何故だ。俺は、……お前を裏切った身だ」  渾身の思いを込めて発する関の耳に、先刻まで聞こえていた高めの声ではなく、低く、そして渋い呻きが届く。  子供の頃に、学生の頃に目を輝かせ聴いていた、智也の甘いボイスそのものだ。 「貴方は裏切ってなどいない。誰も悪くはない。悪いのは、貴方の家族を人質に、良いように操ろうとした連中です」  驚きはしたが、いつまでも聞き惚れてばかりいられないと、次の台詞を発する。
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