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「もし樒ちゃんが受けてくれたらさ、ウチが制作会社として名乗りを上げたいなって」
「はぁ」
有名な会社だけに、並の相手ならば二つ返事で意見を覆しそうな、素晴らしい提案だったのだが、樒には魅力に感じないのかいまいち反応は薄い。
それどころか、この話はもうして欲しくない空気まで醸し出してさえいるのだ。
余程根性が据わっている。
「勿論、主役は関君抜擢でさ、先輩騎士の役、樒ちゃんが演っても良いなーって考えてたのに」
「そうでしたか」
何だか樒が引き受けた方向に見える形で話が進んでいっているが、あくまでも返事は素っ気ないものなので、残る二人は事の次第を見守る他ない。
「本当はさ、もうちょい時間さえあれば、一話分くらいは絵コンテ描いても良かったかなーって思ってたんだよ?」
「絵コンテは確かに観たかったですね」
つれなくはあるが、一応は全ての言葉に反応しているのだから、樒はこれでいて案外律儀な性格なのだろう。
一度女中が入り、料理が運ばれ会話は中断されたが、それが終わるや否や再開される。
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