第一章・―声優? チャラ男じゃねぇか―

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 その前に立つ、ポニーテールを揺らす女性は、グレーのタイトスカートを履き、薄いピンクのシャツの上からグレーの背広を羽織っている。 「……」  青年は一見幼い顔つきなのだが、これでも三十路は越えている、立派な大人だ。  加えて、学生の時に小説家としてデビューしてからというもの、並みいる巨匠を薙ぎ倒し、あらゆる賞を総なめする程の実力の持ち主。  伴う迫力といえば、相当なものであった。 「……あ、あの。先生、……。怖いです。無言が」 「アニメ化、認めませんからね」  何か発してくれと言われた矢先、要望に応えたは良いのだが、相変わらず物凄く低く怖い声音である。 「でも、もう主人公の声も候補がいるんです」 「……は? 声優が既に決まっているって事ですか?」  片眉が上がる青年に、女性が青ざめながら首を横に振る。 「ち、違います! えっと、決まってなくてですね! アニメ化が決まったのを聞きつけたみたいで、向こうからオファーがですね……!」  もう女性は泣きそうだ。
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