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その前に立つ、ポニーテールを揺らす女性は、グレーのタイトスカートを履き、薄いピンクのシャツの上からグレーの背広を羽織っている。
「……」
青年は一見幼い顔つきなのだが、これでも三十路は越えている、立派な大人だ。
加えて、学生の時に小説家としてデビューしてからというもの、並みいる巨匠を薙ぎ倒し、あらゆる賞を総なめする程の実力の持ち主。
伴う迫力といえば、相当なものであった。
「……あ、あの。先生、……。怖いです。無言が」
「アニメ化、認めませんからね」
何か発してくれと言われた矢先、要望に応えたは良いのだが、相変わらず物凄く低く怖い声音である。
「でも、もう主人公の声も候補がいるんです」
「……は? 声優が既に決まっているって事ですか?」
片眉が上がる青年に、女性が青ざめながら首を横に振る。
「ち、違います! えっと、決まってなくてですね! アニメ化が決まったのを聞きつけたみたいで、向こうからオファーがですね……!」
もう女性は泣きそうだ。
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