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「成る程、向こうからオファーが」
「は、はい」
「じゃあ断って下さい」
「何故!?」
「むしろこちらが何故と言いたい」
あくまでもアニメ化を断る気満々らしく、取りつく島もない。
それだけ答えて再びパソコンへと視線を戻した青年は、それ以降無言のまま何も発する気がないようだ。
「先生、取り敢えず会うだけでもお願いします」
「……」
「樒先生、私、あのファンタジー作品が大好きなんです。今回、アニメ化の話が持ち上がって、自分の事のように嬉しかった。だから先生にも、喜んでもらえると思っていたのに……」
その場に崩れ落ち、本格的に泣いてしまった女性を横目で見て、青年……樒が初めて困ったような表情を浮かべる。
「……あのファンタジー作品は、僕にとっても思い入れは深いです」
「だったら尚更!」
がばっと顔を上げる女性に、びくりと身体を震わせた樒だったが、すぐに立て直すと続ける。
「あの。だから、あまり安易に扱ってほしくないというか……」
かなり口調がしどろもどろになっている。
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