第一章・―声優? チャラ男じゃねぇか―

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「せ、先生。台詞が物騒です」 「チェンジでお願いします」 「いや。ここは指名制の如何わしい場所とかではないです、先生」 「じゃあ帰りますね」  珍しく食い下がる女性に、満面の笑みを浮かべた樒は、有無を言わせない勢いと力強さで、チャラ男こと関に見向きもせず、会議室を後にしようとする。 「か、帰らないで下さいよ」 「先生! 俺、あのファンタジー作品の大ファンなんです! それが今回アニメ化されるって聞いて、いても立ってもいられなくて!」  そしてこっちは、少しは空気を読めよと突っ込みを入れたくなるくらい、樒達の会話を華麗にスルーした、関のまくし立てにちらりと視線を寄越す。 「そうですか。良かったです。じゃあ」 「か、帰らないで下さい!」 「……」 「アニメ化、しないんですか?」  慌てた女性が全力で止めるのに、先刻までの勢いも失せ、途端にしゅんとする関を前にした樒が盛大にため息を吐く。 「あの作品の主人公には、彼の事を深く理解して、共感する人間にしか演らせたくないですから」 「理解してます。俺、何回も何回も、シリーズ全部読破しているんです」  関が応える。
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