(3) はじめての……

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 「章」は本にも関係する字だし、本好きの先輩にとても合っている。  おまけに「あきおみ」という音の響きも知的でかっこいい。これも先輩に合っている。  つまり。  藤沢先輩は見た目だけじゃなく、フルネームまでかっこいい!!  自分の名前はひらがななので、知的な漢字の名前には強い憧れがあるのだ。  そうこうしているうちに和室へ到着。  部屋に入ると、厳格そうな年配の男の人が姿勢正しく座っていた。  うわっ! きっとこの人が先輩の大好きなおじいちゃんだ!  そう思った私は急いで頭を下げ、おじいさんに挨拶する。 「はっ! はじめましてっ! 平井まどかです!」  すると、おじいさんは相好を崩し、声をあげて笑った。 「はっはっはっ! 元気なお嬢さんだ!」 「すっ、すみませんっ」 「いやいや、元気なのは結構結構! まどかさんと言ったか? 章臣と仲よくしてくれてるみたいで、ありがとうなぁ」 「い、いえっ!! 私の方こそいつも先輩にはお世話になってます!」  おじいさんは笑うと厳格な雰囲気が一気に崩れ、優しくてダンディなおじいさんに様変わりする。  よくよく見てみると、目の辺りが先輩によく似ていた。いや、逆か。先輩がおじいさんに似てるんだ。
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