(3) はじめての……

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 お母さんに笑顔で凄まれ、条件反射でコクコクと頷く。  するとグイと引っ張られ、私はまたたく間に拉致されてしまった。 「母さん! 平井をどうすんだよ!?」 「お祭りに行くなら浴衣じゃなきゃ! 平井さんに浴衣着せてあげるに決まってるでしょ!」  お母さんの表情は嬉々としている。  隣の部屋に入り「娘が欲しかったのよね~」なんて言いながら、和箪笥の引き出しを開け、次々に浴衣を出してきた。  これなんてどう? あら、これもいいわねぇ、なんてはしゃいでいるお母さんを目の前に、私は為す術もない。  でも、私に浴衣を着せることでこんなに喜んでくれるなら、私としても嬉しいかぎりだ。  先輩のお母さんと一緒にキャッキャと友達のようにはしゃぎながら浴衣を選ぶのは、それはもう楽しい時間だった。  やっとのことでこれ! という浴衣を選び、お母さんに着せてもらう。  お母さんはどうせなら髪もアップにしようと言い出し、髪まで結ってくれた。
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