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「あら! 素敵!」
「似合っとる似合っとる!」
お母さんもおじいさんも大はしゃぎだ。
「章臣は濃い色の浴衣だろうから、平井さんは薄い色にしたの。バランスぴったりだわ!」
私の浴衣は、生成りの色合いで青と紺のレトロな紫陽花模様があしらわれている浴衣。
涼しげで、それでいて可愛くて、すごく気に入ってしまったのだけれど、お母さんにはそんな目論見もあったのか!
「さ、二人とも楽しんでらっしゃいな」
私と先輩は無言で顔を見合わせる。そして、同時にお母さんとおじいさんの顔を見た。
もはやこの状態で行かないという選択肢はありえない。
「せ、先輩、いいですか?」
「平井こそいいのか?」
あ、先輩気にしてる。
無理やり巻き込んで悪いなって顔をしている先輩に、私は満面の笑みを向けた。
「もちろん! 今年の夏はお祭りに行けなかったので嬉しいです!」
そう言うと、先輩はやっと安心したように表情を和らげて笑ってくれる。
こうして私は浴衣に下駄までお借りして、先輩にお祭りに連れていってもらうことになった。
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