242人が本棚に入れています
本棚に追加
「先輩が優しい」
いや、藤沢先輩はいつも優しい。それはよくわかっている。
でも、今は普段の優しいというのとはちょっと違っていて。
「ヤバイ……さっきのおじさんの彼女発言が……」
そう、なんとなく先輩とお祭りデートしている気分になってくる。
そう思った途端顔が火照ってきたので、慌てて頭を振ってそんな考えを隅に追いやった。
「美味しそう」
湯気が立ち上っている野菜たっぷりのソース焼きそば。うん、これを見てれば気が紛れる。
焼きそばはテーブルの適当な場所に置かれていたので、自分たちの席の前に持ってこようとお皿に触れた。
「熱っ」
焼きそばに手が触れないようにお皿の下を持って移動させようとしたのだが、熱さに手を引っ込める。
「あ……」
先輩がここまで焼きそばを持ってくれた理由がわかった。
「うわぁ……」
先輩だって熱かっただろうに。
気をそらせようと焼きそばに目を向けたのに、先輩の優しさに気付いてしまって益々顔が赤くなってくる。
まだ少し時間が早いせいで、周りはまだ明るい。
夜なら、誤魔化せるのに!
最初のコメントを投稿しよう!