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「平井」
「えっ? うわっ! はいぃっ!」
「何慌ててんだよ。お茶」
「あ、ありがとうございます……」
先輩から受け取ったペットボトルのお茶が冷たくて気持ちいい。
これをこのまま頬にくっつけたい。
「暑いか?」
「え?」
「顔赤い」
ぎゃあっ! やっぱりですよね、バレちゃいますよね、この明るさじゃっ!
「いや、えっと、ひ……日に焼けちゃったかなぁっ!? 日焼けすると赤くなるんですよねっ」
「ふぅーん」
幸いそれ以上ツッコまれず、私たちは隣に並んで座り、焼きそばをすすった。
「美味いな」
「屋台の焼きそばってなんでこんなに美味しいんでしょうね!」
浴衣を汚さないように細心の注意を払いながらも、箸はどんどん進む。
先輩を見遣ると、先輩も美味しそうに焼きそばを食べていた。
その表情はいつもより幼く見えて、何だかよけいに可愛いとか思ってしまい、さっきからずっと呼吸困難だ。
誰か私に酸素マスクをクダサイ……!
それから私たちは綿菓子を食べたり、金魚すくいなんかもやってお祭りを存分に堪能した。
私はその間中ずっと呼吸困難のまま。
いつもとは違う先輩の表情にドキドキしっぱなしで、にも関わらず、すごく楽しくて。
ずっとこんな時間が続けばいいのに、なんて思ってしまった。
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