242人が本棚に入れています
本棚に追加
段々と辺りが暗くなってきた頃、先輩が空を見上げながら言う。
「そろそろ帰らなきゃな」
「そうですね」
名残惜しいけれど仕方ない。私も同じように空を見上げた。
オレンジと群青が交じり合った、夕暮れと夜の間。
お祭りで色んなものを食べて、遊んで、こんな綺麗な空を先輩と二人で見ている。
これ以上は贅沢というものだ。
ゆっくり歩きながら石段まで来ると、先輩が私を振り返り、手を差し出した。
「え……?」
「手」
「え、えっ!?」
私がオロオロしていると、先輩は強引に私の手を取る。
そして、私を支えるようにして石段を下り始めた。
「足元フラフラしてるから」
慣れない下駄で歩きづらいのもあり、若干ふらついていたのは事実だ。
そう思って、また気付いた。
最初のコメントを投稿しよう!