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風音は「いいですよ、上がって。お疲れ様です」と言ってレジに入ってくれた。
なのでそのまま「いらっしゃいませ」、声を掛けて通り過ぎようとしたんだけど。
目が合って思わず「あ、ぬくみちゃんのお母さん」、声が出てしまう。
ぬくみちゃんのお母さんは少し驚いた顔をしながらも「花江さん」、笑顔を返してくれた。
でも少し元気のない笑顔。と言うか。
「今日は、ぬくみちゃん、いないんですか?」
何気なく聞いたコトだったのだけど。
「あ、はい、まあ」
すごく困ったように目を逸らされてしまった。
2ヶ月くらい前までは、ぬくみちゃんという5歳の娘さんと一緒に週末の午前中、よくドーナツを食べに来ていたのだけど。
最近見かけないなと思っていたところに、顔を見たので思わず声をかけてしまった。
でもあまり、聞かれたくなさそうに見える。
「すいません。ゆっくりドーナツ選んでください」
私は笑顔で話を切り上げると、軽く頭を下げてバックヤードへと下がった。
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