ACT 1

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「私と出かけたくないの?」 思わず言うと、松瀬くんは「……ことはない」、呟いた。 でも、小さな声がマスクで更に塞がれて。 「聞こえない。ちゃんと言って」 松瀬くんはハニーディップをトレーに並べながら答える。 「……そんなことはない」 「そんなことって何?」 「そんなことは、そんなことだ」 「分かんない、その言い方じゃ」 ばしばし松瀬くんに腕を叩いていると。 「……誰かいる」 松瀬くんが呟く。 「ウソついてもだめだからね」 「うそではない」 指に釣られて視線を向けると……確かに、自動ドアの向こうからこっちを見ている人がいる。 って、まだ5分前だけど。
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