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「私と出かけたくないの?」
思わず言うと、松瀬くんは「……ことはない」、呟いた。
でも、小さな声がマスクで更に塞がれて。
「聞こえない。ちゃんと言って」
松瀬くんはハニーディップをトレーに並べながら答える。
「……そんなことはない」
「そんなことって何?」
「そんなことは、そんなことだ」
「分かんない、その言い方じゃ」
ばしばし松瀬くんに腕を叩いていると。
「……誰かいる」
松瀬くんが呟く。
「ウソついてもだめだからね」
「うそではない」
指に釣られて視線を向けると……確かに、自動ドアの向こうからこっちを見ている人がいる。
って、まだ5分前だけど。
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