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それにベトは、初めて出会った時を彷彿とさせる姿――身を屈め、覗き込むように送る笑みを、送った。
「あんたに……チャンスが、巡ってきたぜ?」
「チャンス、ですか?」
「ああ、世界を変えられるかもしれない、チャンスだ」
アレはベトを見上げたまま、胸に手をやった。
そこに至るのは期待か、不安か、ただの動揺なのか――一瞬だけ思いを巡らせ、ベトは言った。
「軍隊が来てる。あんたの力を見込んでだ。ついていけば、あんたは兵器として戦場に駆り出されるだろう。そしてあんたの力が本当に悪魔のものだと言うなら、たぶんこの戦争こっちが勝つだろう。そうすれば世界は変わるかもな。戦争のために向けていた生産力を国力に回し、人々も自活し、国は豊かになるかもしれない。どうする?」
あまりに端的といえば端的な問いかけ。
そして無知になものには残酷ともいえる説明。
ベト自身、この言葉の意味はわからなかった。
だがこうしなければならない、という衝動にかられてやっていた。
この結果どうなればいい、という意図すらない。
もしついていくなら、厄介払いが出来る。
自分たちの仕事はなくなるかもしれないが、祖国を捨てればことたりる。
戦争なんてどこにでもある。
逆に残るというなら、それはそれで面白くなるかもしれない。
逆賊として狙われ、この力がどこまで通じるか、自分とどこで野垂れ死ぬか。どの道まともな道は残されないだろう。
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