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掴んでいた襟首を離してぽい、とアレを布団に放って、頭をガリガリガリガリかいてベトは叫んだ。
めいっぱい。
威嚇したり鼓舞したりといった目的を持ったもの以外の感情に喚起されてこれほどの大声を発したのは、初めてのことだった。
それをアレは、ただじっと見つめる。
そこに込められた感情を、ベトは読みとることは出来なかった。
「――――――っ、あァっ!」
一通り叫びに叫びに叫んで、ベトは思い切り頭を前に振った。
この間久々に入った風呂のおかげで流れる前髪が、顔の全面を覆った。
そしてそれをブルブルと振って、乱暴にかきあげて、目を開けて、
「――わァった。オレも、一緒に行くわ」
「ベトも?」
「あァ、オレもだ!」
半分ヤケのような気持ちだった。
どうとでもなれ、と思った。
シンプルに考えてきたつもりだったが、それすらも放棄したような心地だった。
これから先の自分の姿を予想するのすら、やめた。
どうせ野垂れ死にが、妙な死に方するだけだ。
意味ねぇ。
そんなことよりも、胸の衝動が勝ってしまった。
まったく、自分らしくもない。
「……ありがとう」
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