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ぽろ、とアレは涙を零した。
それにベトは、どこか違和感を覚えた。
そういえば最初に手伝ってやると言った時は、まるで濁流のように泣きじゃくっていた。
このような泣き方は、この子らしくない。
それで、気づいた。
「本当に、ありがとう……ございます」
声が、震えている。
指先が、震えている。
その身体が小刻みに、震えていた。
必死に、抑えていた。
心からわき上がる、恐怖心を。
不器用過ぎる。
どうしてそういう生き方を選ぶのか?
心のままに生きればいいんじゃないか?
無理せず、受け入れ――
「ッ……なるほどな」
「え、なんですか?」
瞳の涙を拭いながら、アレが尋ねてくる。
それにベトは、首を振る。
意味がない。
受け入れて生きることが、心のままに生きているだなんて。
二人並んで下りてきたベトとアレを見て、スバルは声をあげた。
「あ、おいベト! 国軍が来てるぞ、嬢ちゃんに用があるそうだ。なんでも――」
「あぁ、わかってる」
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