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そして手は、離れた。
そしてベトはしばらく、その手を左手で擦っていた。
感触は、しばらく消えなかった。
「アレ」
そしてアレもまた、声をかけられていた。
振り返ると、そこにはこちらを見つめるマテロフと、そっぽを向き鼻をかくレックスの姿があった。
「あ……マテロフさんもレックスさんも、今までお世話になりました。もう会うことはないかもしれませんけど、どうかお二人とも、お元気で――」
「……おい、お前さ」
言葉の途中で、レックスが口をはさんだ。
しかしそれはちょうどマテロフも声を掛けようとしたタイミングで、出鼻を挫かれた形になり少しマテロフはこめかみを痙攣させる。
そんなことには気づかずレックスは前に出て、
「……死ぬんだぜ? わかってるかもしれねぇけど、そりゃあ死ぬって怖いぜ? それでも世界を変えなきゃ……なんねんだよな。契約、だったっけ?」
「はい、契約しました。神様と。だからわたし、既に死んでるんです」
にこり、と彼女は花のように微笑む。
『……くっ!』
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