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なにが彼女をそこまで言わせるのかは、わからなかったが。
「……ならばベト。貴方の責任は、重大だ」
「ああ、わぁってる。毒食わば皿まで。なンなら地獄までお供してやるよ」
半分投げやり、半分本気でベトは言っていた。
実際もう二択だろう。ヤルかヤラれるかだ。
とそこまで考えて、ベトは元々自分がそういう人間だったことを思い出した。
なにも変わってない。
なんだオレ、意外と理屈っぽかったんだな、と皮肉な笑みを漏らした。
「……お前、真面目に聞いてるのか?」
「ああ、聞いてる聞いてるって。ただ、なんてこたねぇなぁって思い至っただけさ。さてまぁ、そういうこってオレたちは当初の予定通り、王都に向かうわ」
言って、さっくりとベトは立ち上がった。
剣を鞘に収めて、そしてスタスタとアレの傍まで歩いていく。
差し出した手を、アレは微笑みと共に掴み、そして立ち上がり、ベトは手近に転がっていた杖を渡した。
「じゃな、マテロフ、スバル。もう会うこともねぇだろうけど、達者でな」
「――ああ、いってこい。お前はわしの息子だということを、忘れるな」
「ハッ、そういうことにしといてやるよ」
スバルの言葉に背中を向けたまま手を振って、一度も振り返ることもなくベトはアレと去っていく。
清々しいほど、気軽に。
「…………ま、」
「待て、マテロフ」
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