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ベトはずっと、歯を食いしばり胸を抑えて、夜をやり過ごそうとした。
だけど耳に、他の人間の鼓動が聞こえる。
それを無視することが、出来ない。
――彼女も、もう先はないだろう。
バラすべきではなかった。
少なくとも、この傭兵部隊以外には。
だけど彼女は、使ってしまった。
その力を、自分がいない時に、自分以外の仲間のために。
その皮肉な出来事が、なんだか納得できなかった。
まるで大きな流れに、自分たちが翻弄されているようで。
すべきことはないのか?
来るべき時のために、こんな風にのうのうと眠っていていいのか?
「…………」
考えても、結局いまこの場所で出来ることは、他にはなかった。
自分はこの日々を捨てられず、彼女にもほかに居場所はなく、そして事態は変えられない。
変わらないんじゃない、すべては変えられないんだとベトは理解した気になった。
確信も、ないまま。
そして明日が、やってきてしまった。
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