第1章

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 ベトはずっと、歯を食いしばり胸を抑えて、夜をやり過ごそうとした。  だけど耳に、他の人間の鼓動が聞こえる。  それを無視することが、出来ない。  ――彼女も、もう先はないだろう。  バラすべきではなかった。  少なくとも、この傭兵部隊以外には。  だけど彼女は、使ってしまった。  その力を、自分がいない時に、自分以外の仲間のために。  その皮肉な出来事が、なんだか納得できなかった。  まるで大きな流れに、自分たちが翻弄されているようで。  すべきことはないのか?  来るべき時のために、こんな風にのうのうと眠っていていいのか? 「…………」  考えても、結局いまこの場所で出来ることは、他にはなかった。  自分はこの日々を捨てられず、彼女にもほかに居場所はなく、そして事態は変えられない。  変わらないんじゃない、すべては変えられないんだとベトは理解した気になった。  確信も、ないまま。  そして明日が、やってきてしまった。
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