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「ふにゃむにゅ……ふぁい?」
どこまで平和的リアクションだった。
相変わらず緊張感がないが、今日はそんなことを言っている場合じゃない。
手早くぺちぺち頬をはたいて、
「おい、おいおいおいおい」
「ったい、たいたいたいたい痛いよベトォ……」
「お、もう起きたか?」
「お腹痛いよォ、もう食べられない……むにゃ」
「はいべたなオチをどうも……っと」
物理的な痛みには耐性が出来てしまったような厄介なアレの鼻と口を、両手で摘む。
そのまましばらく放置。
ふんふふーん、と鼻唄なぞ口ずさむ。
傭兵仲間に伝わる伝統的なものらしく、歌詞は一切不明。
おそらくは勇気を喚起しているものかと。
「――――――っぷあああ!」
「お、反応あり」
「くはっ、かはっ、ごは、ぐぇ……おええぇぇええええ!」
「うあ、あんたってなにえづきやすいタイプ?」
「へ……べ、ベト?」
涙目で肩を激しく上下させて咳き込むアレは、そこでようやく目の前に立って自分に色々悪戯する人物に気づいた。
だがここにやってきて、ベトが自分を起こしたことは初めてのことだった。
だから状況が――まぁ元から意味不明な状況だが――掴めず、ひたすら咽ながら疑問符をいくつも浮かべている。
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