母と宇宙船

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 宇宙船での食事は何を食べても同じに思える時期が来るだろう。そうなれば地球で買った甘いものは、地上を思い出す食べ物になる。甘いものはさびしさを持ち込むようなものかも知れない。それに気がついても今更、白いビニール袋を返してとは言えない。 「緊張してる?」  不粋な質問しかでない。緊張しているのは僕の方だ。 「ううん、してないかな、家に居ても1人は同じだし」  最後まで皮肉っぽい。決して一緒に住もうとしなかった僕をなじっている。不安もあるだろうし怒っているのかも。もちろん淋しさも、もしかしたら悔しさもあるはずだ。 「うん、酸素と風景以外は同じだね、地球だって宇宙船地球号だし」  同じ様に皮肉を言ってしまう。母のイライラは僕にも感染している。もう最後だというのに。母からため息だけが返ってきた。 「でも、良かっ たじゃん、あなたを悪くいう人が誰もいない宇宙だよ」  止まらない僕の言葉。僕は自分の言葉にため息を返した。落ち着け。 「とても…とても僕には行けないところだ」  母の覚悟が、僕は脅威だった。死ぬかもしれないし、生きてても苦しむかも知れない。母を厄介がってる僕への当て付けだろうか?それにしても、だからって行けるところか。 「ほんと、行くんだね」 「あなたも望んだでしょう、あなたの提案じゃない」     
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