きみがすき。

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でも、それは途切れ途切れかもしれないけれど紛れもなく君と過ごした時間そのものだ。 切り取られた記憶の全てに、君は生きてる。香りや、音もちゃんと生きてる。 僕は初めて、愛の名を知った。 君は僕にどれだけ初めてをくれるんだろう。 君はどれだけ僕の知らないものを持っているんだろう。その小さな体に。 その分だけ、私も貰ってるの。と君は笑うけれど、僕は嘘だい。と返して笑った。 だってそれは本当に、魔法のようなものだった。 小さな体から無限にわき出てくるのではないかと思われるような優しさと愛しさで、僕はいつもあっぷあっぷしながら溺れまいと君に捕まる。 それを君はまた微笑んで見守り、僕に柔らかい口付けを落とす。 もしかして、君はマリア様の生まれ変わり? バカね。と君は笑う。 なら、君は僕にとって乙姫様だ。 そう食い下がると、君は決まって鈴の音のような声で笑い転げるんだ。 わたし、あなたをおじいさんにしたくなんかないよ 今が、すきなの。この今の瞬間のすき、が、ずっと続いてくんだよ。 そういって、僕らはヤドリギの下のようなキスをした。 君は目をつむる。 僕は薄目をあける。 すると君は決まって僕の盗み見に気付いて、唇の隙間から笑い声を漏らしながら僕の胸をたたいて抗議するんだ。     
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