ど真ん中を目指して

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ど真ん中を目指して

 中肉中背にサヨナラ。  これから私は、ぽっちゃりさんになります。  中学三年の私、一万田育恵は、夏休みを前にバレー部を引退しました。  今までは、顧問の先生の指導や、足への負担を考えて遠慮していましたが、もう、問題ありません。  私は、ぽっちゃりさんになります。正しく、佐伯君好みの女の子になります。  佐伯君は剣道部でした。剣道部も、三年生はもう引退です。クラスでは、普段、ぼんやりぽややんとしている佐伯君。部の仲間うちでは、来島中の斬り込み隊長と呼ばれていました。 「斬られる前に斬る。斬られてしまっては、後悔も出来ぬからな」  なんて言って、木刀を振り回しているのを見たことがあります。黒っぽい歴史な感じです。でも、竹刀や木刀を握ると切り替わるタイプなんだろう、って私は受け入れています。  佐伯君がぽっちゃり好きなのは間違いありません。  小学校六年の時も、私と佐伯君は同じクラスでした。その時の担任、毛利先生は、ある席替えの方法を提案し実施しました。それは、紙片に、自分の名前と隣になりたい異性の名前を三番目まで書き、集めた紙片を元にして、毛利先生が私達の席を決めるというものでした。一学期二学期三学期、席替えの度に、それは繰り返されました。席替えは何度もありましたが、佐伯君の隣の女子は大体、ぽっちゃりさんでした。  ……当時は、純粋に席替えのことだけを考えてクラスメートの名前を書いていましたが。今思うに、毛利先生は、あのデータを他の用途にも使っていたのではないでしょうか。趣味がいいという感じはしませんね。佐伯君の好みが分かったのはいいことでしたが。  佐伯君は、ぽっちゃりが好きなんです。失礼ですけど、顔が可愛いとか、勉強が出来るとかは関係ありません。佐伯君は、ぽっちゃりが好きなんです。
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