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日当たりのより居間で、レディ・ノースブルックと午後のお茶を楽しむことは、エドガーの“業務”の一環だった。
袖口にフリルをあしらった、水色のスタンドカラーのドレスに身を包んだ少年は、優雅な所作でカップを口もとに運ぶ。貴族の娘として、何ら疑問を抱かせることのない完璧な立ち居振る舞いだ。
「レイチェルも、もう十七歳ね」
リオノーラは、しみじみといった様子でつぶやいた。ゆるやかに編まれた黒髪の隙間で、黒玉の耳飾りが揺れる。
「ええ、お母様」
レディ・ノースブルックに、彼女はにっこりと微笑んだ。
同年代の男性と比べて華奢な身体つきだが、変声はすでに迎えている。声は高めに出すように意識していた。
伯爵令嬢のフリも八年目だからな、とエドガーは心の中でひとりごちた。
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