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そう言って、返された写真をまた大事そうに手帳の中へとしまい込む。
「彼女の方では、とっくに忘れてたりなんかして」
「うん。そういうこともあるだろうな」
「もしこのまま会われへんかったら?これから先もずうっ・・・と」
「そうだな。どうしようか」
重ねた意地悪な質問にも、笑みが消えない。分かっていたことだとは言え、またひとつ吐息が唇からこぼれそうになる。
何のことはない。一点の曇りもなく信じているのだ、智雪は。いつか必ず、彼女と再び出会えることを。
・・・負けたな。
そう思うと正直悔しい気はする。少しだけ胸がせつなく痛むのは、野上としては結構本気で、智雪のことを気に入っていたりしたからだった。
できるなら友人としてではなく、一人の女として見てほしかった。ささやかな願望は、絶対に口に出さない。言う前から完敗だった相手に伝えたりしない。こんないい女を袖にするなんて絶対絶対大損なのに!――なんて。
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