Ⅰ 雑踏

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 ――果たして天然なのか、はぐらかされたのか。  智雪の真意は今ひとつ掴みきれない。が、どっちにしても、もうさっきみたいな肩透かしは御免だった。野上は今度こそは・・・と、一番最初に聞きたかったことをそのままズバリと口にした。 「捜してる人がいるって・・・アレ、ほんとに本気のマジやったんや」  野上の、真剣きった問いかけを驚きの中で受け止めながら、智雪の心のどこかが思った。  ・・・ああ。やっぱり、と。  相手こそ違え、すでに幾度目になるだろう。同じ場所で聞いた同じ言葉に、智雪は知らずつい微笑んでしまう。  気になっていたのか、心配してくれていたのか。はたまた信じていなかったのか、信じられなかったのか。  どちらにせよその問いを投げかけられる度、智雪はどうにもくすぐったい。自分としては当たり前だったつもりの行動が、ひょっとして周囲の人の目にはどこか違って、奇異に映っていたのだろうか、と。  智雪は両手で頬杖をつき、野上と同じポーズをとってみる。 「勿論ほんと。嘘は言わないよ。自分に正直にってのが俺のポリシーだからね」 「じゃないと、見つかるもんも見つけられへん・・・?」     
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