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にこりともせず返された直球に、智雪は少々面食らった。頬杖を解くと、はにかむように笑う。
「そういう訳でもないけど。あいつ・・・坂野見てるとさ、気持ちいいだろ?ああ、裏表がないっていうのは、こういう奴を言うんだなって。だから、できるなら俺もなるべく自分を偽るような真似はしたくないって思ってる」
「・・・まあね。あいつの場合はちょっと特別っていうか、正直の上に更に大きく『馬鹿』が付くけど」
二人が揃うと凸凹コンビとも呼ばれる、やったら賑やかで、小柄な癖に存在感だけは強烈な智雪の親友の姿を脳裏に思い描き、野上は小さくため息を付いた。
「智雪から初めて話聞いた時にもすごいわって思ったけど――。さっき、ここに座ってるの見た時は、それ以上に・・・何ていうかショックやった。胸がこうギュッて締め付けられて、切ないとかそんなんでもなくて、何やろ・・・?こういうのって・・・なんかいっそのこと、妬ける」
智雪は大学に入学した当初から、そして今現在も、彼を知る友人達の間ではちょっとした有名人だった。
上背もあり均整のとれた身体に、もれなく付いてくるのがとろけるようなやさしい笑顔。ルックスだけとってみても周囲の群を抜いている、女の子好みの超の付く好青年だ。
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