Ⅰ 雑踏

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 なのに、親しい女友達はいても決してそれ以上の付き合いはしない。コンパの類は誘うだけ無駄で、体の空く限りはバイトを優先させてしまう。  聞けば高校時代からそうで、並み居る女の子達を尻目に、生まれて此の方彼女いない歴を日々更新し続けているのだそうだ。それを承知で尚果敢にアタックし、見事に散っていった強者も勿論少なからず存在する。  勿体ない――!  と、毎度のように力説するのは、当時からの腐れ縁が続く坂野だ。(ひとみ)ちゃんという大事な彼女がいる癖に、その前でもそんなだから喧嘩が絶えないのだが、それはまあここではあまり関係がないので横に置いておくことにする。  智雪も普通の男だから、決して女の子に興味がない訳じゃない。女嫌いだという話も聞かない。智雪が彼女を作ろうとしないのには、一応理由があるにはあった。が、それがちょっと変わっていて、普通とは違っていた。  ――捜してる人がいるんだ、と智雪は言う。  それも、たった一度だけ会って言葉を交わした、名前も知らない女性(ひと)を。  手掛かりと呼べるものは一枚の写真だけ。しかも、それが彼女の好きだった男のものだというのだから、かなり謎だ。     
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