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「私は願いを叶える為に、この図書館に来たんです」
「願いを叶える為?」
「此処は、願いが叶う図書館なんですよね?」
一体何の話だろう。せあらは神の横顔を見た。神はますます機嫌を損ねているようだった。鉄太さん夫婦も不思議そうにしている。
「誰かにそうやって聞いて来たの?」
「はい。この図書館に通うと、願いが叶うって」
「誰に?」
「……多分、仕事の仲間です」
唯衣子は自信がなさそうに答える。誰に聞いたか、はっきりとは憶えていないのだろう。
「そうなのか?」
鉄太さんが神に訊ねる。神は鬱陶しげに、
「さあな」
と、短く答える。
しかしそんなご利益があっても、おかしくはないのかも識れない、と、せあらは思った。
するとすぐに、神がせあらに顔を向けて、
「ある訳がないだろう」
「……ご、」
ごめんなさい、と、せあらは頸をすくめた。
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