1:ケーキ! ケーキ! ケーキ!

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「違うんですか?」  唯衣子が泣き出しそうな顔をする。 「何か大切な願いごとがあるのね、」  晶良さんがやさしく訊ねる。はい、と、唯衣子は頷く。それから躊躇するように晶良さんと鉄太さんを見て、 「私、ケーキを嫌いになりたいんです」 「どうして、」 「ごめんなさい、お二人の前でこんなことを云って」 「ううん、そんなこと気にしないで。でも、どうして。どうしてわざわざ好きなものを嫌いになりたいの?」 「怖いんです。私、本当にケーキが大好きなんです」 「それは、不可(いけ)ないことなの?」 「駄目なんです。私、ケーキを食べ出すと、もう、止まらなくなっちゃうんです。一切れ食べると、食べ終えた瞬間からまた新しいのが食べたくなって、お店に走ってしまうんです。それで、今度は大量に買って来て、一気に食べてしまうんです」  増え過ぎてしまった体重に、一念発起して、ケーキを我慢して、痩せた。でも痩せてもケーキへの渇望は止まらない。ううん、むしろ以前よりももっと大きくなってしまった。痩せたから、一切れくらい食べてももう大丈夫だろうと、つい、ケーキを買ってしまった。それがいけなかった。ケーキへの欲望に、生活が飲み込まれていった。
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