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四六時中ケーキのことばかり考えている。おかげで仕事でミスをして怒られてしまう。けして多くない給料もケーキ代へと消えていく。休みの日は出歩くことなく部屋でケーキを黙々と食べている。このままではまた体重が増えてしまうのではないかと云う恐怖から、ケーキをたくさん食べた後は、二日間は絶食をする。ふらふらの躰と頭で仕事に行けば、当然ミスをしてしまう。また怒鳴られる。落ち込んでもお腹は空く。食べたいのはもちろん、ケーキ、ケーキ、ひたすらケーキだ。
「苦しくて。でも、自分ではどうしようも出来なくて。だからいっそ、ケーキを嫌いになれば、こんな思いをしなくて済むようになるんじゃないかって、思って……、」
「辛いんだね」
晶良さんが共感を示すように、彼女の背中を撫でる。
「判ってるんです。自分がだらしなくて、意志が弱い所為だって。それでもものすごい勢いで堕落していくようで、怖くて」
「それで、此処に来たんだね」
「はい」
唯衣子は洟をすすって頷く。
「──判った」
神が低く云った。
「ならば此処へ百日通え。そして呆れるほど本を読め。そうだな、三百冊読んでみせろ。そうしたら、お前の願いは叶う」
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