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何を云い出すのかと、せあらは愕いた。鉄太さんもあわてたように、神に注意をしようとする。
「おい、そんなこと云って……、」
「はい、判りました!」
しかし唯衣子はすでに願いが叶ったかのように、晴れ晴れとした表情で、答えた。
「私、絶対に百日通います! 三百冊、読みます!」
大声で宣言をすると、さっそく閲覧室へ行って、本を読み始めた。
おい、と、鉄太さんが渋い顔で神に云う。
「願いは叶うって、お前が叶える気か?」
「そんなつもりはない」
神はさらりと答える。
「ならどうしてあんなことを云ったんだ。無責任だろう」
「そうだよ。それに三百冊だなんて、そんなの無理に決まってる。彼女、お勤めしてるんだよ。毎日此処へ通えたとしても、そう何時間もいられないでしょう」
晶良さんも神を批難する。
「全て此処で読む必要はない。借りていけば良い」
「もしかして、彼女が挫折すると考えてるの?」
「さてな」
「そんな風に人の心を弄ぶのは、いけないことだよ、神さん」
晶良さんは神を睨みつけた。神は平然とした態度で立ち上がり、そのまま温室を出ていってしまう。いつもの自分の席で、執筆を再開するのだろう。
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