1:ケーキ! ケーキ! ケーキ!

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 何を云い出すのかと、せあらは愕いた。鉄太さんもあわてたように、(ジン)に注意をしようとする。 「おい、そんなこと云って……、」 「はい、判りました!」  しかし唯衣子はすでに願いが叶ったかのように、晴れ晴れとした表情で、答えた。 「私、絶対に百日通います! 三百冊、読みます!」  大声で宣言をすると、さっそく閲覧室へ行って、本を読み始めた。  おい、と、鉄太さんが渋い顔で神に云う。 「願いは叶うって、お前が叶える気か?」 「そんなつもりはない」  神はさらりと答える。 「ならどうしてあんなことを云ったんだ。無責任だろう」 「そうだよ。それに三百冊だなんて、そんなの無理に決まってる。彼女、お勤めしてるんだよ。毎日此処へ通えたとしても、そう何時間もいられないでしょう」  晶良さんも神を批難する。 「全て此処で読む必要はない。借りていけば良い」 「もしかして、彼女が挫折すると考えてるの?」 「さてな」 「そんな風に人の心を弄ぶのは、いけないことだよ、神さん」  晶良さんは神を睨みつけた。神は平然とした態度で立ち上がり、そのまま温室を出ていってしまう。いつもの自分の席で、執筆を再開するのだろう。
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