1:ケーキ! ケーキ! ケーキ!

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「まったく、何を考えているんだろう、(ジン)さん」  晶良さんはまだ怒っている。唯衣子のことが心配だからこそ、腹が立つのだろう。 「それにしても、願いが叶う図書館……か、」  鉄太さんが、ふっ、と、顔を綻ばせる。 「誰がそんなことを云い出したんだろうなあ。なあ、せあら君」  せあらは微苦笑した。本当に、誰がそんなこと云い出したのだろう。此処(ここ)はただの私営図書館だ。蔵書の数も、利用者の数も、公営の図書館とは比べものにならない。一見して図書館とは判らないからか、実際に中に入ってきて(おどろ)く人もいる。この街に住む多くの人は、此処の存在を識らないだろうに、そんな噂が立つなんて。 「でも、もしそれが嘘だって識ったら、彼女どうするんだろう」 「しばらくは黙っていた方が良いかも識れないな」  あれだけ(はげ)しく感情が波打つ彼女だから、その方が良いのかも識れないと、せあらも同意した。
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