141人が本棚に入れています
本棚に追加
「まったく、何を考えているんだろう、神さん」
晶良さんはまだ怒っている。唯衣子のことが心配だからこそ、腹が立つのだろう。
「それにしても、願いが叶う図書館……か、」
鉄太さんが、ふっ、と、顔を綻ばせる。
「誰がそんなことを云い出したんだろうなあ。なあ、せあら君」
せあらは微苦笑した。本当に、誰がそんなこと云い出したのだろう。此処はただの私営図書館だ。蔵書の数も、利用者の数も、公営の図書館とは比べものにならない。一見して図書館とは判らないからか、実際に中に入ってきて愕く人もいる。この街に住む多くの人は、此処の存在を識らないだろうに、そんな噂が立つなんて。
「でも、もしそれが嘘だって識ったら、彼女どうするんだろう」
「しばらくは黙っていた方が良いかも識れないな」
あれだけ烈しく感情が波打つ彼女だから、その方が良いのかも識れないと、せあらも同意した。
最初のコメントを投稿しよう!