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新規のお客が訪れるのを、本を読みながらせあらは待つ。時々、ちらりちらりと、唯衣子の様子を窺った。酷く難しい顔をしたり、欠伸をしたり、なかなか本に集中しきれないようで、ついには机に突っ伏して、睡ってしまった。やはり彼女は読書には親しみのない方なのかも識れない。百日で三百冊は、達成困難な課題ではないだろうか。
客が帰っていった机の茶碗を片附けていると、悠宇君が近寄ってきて、
「せあら君、晩御飯、食べよう」
他の客の迷惑にならないように、ひそひそ声で、云った。
せあらは雇い主の了承を得ようと、神の方を見た。神はせあらの視線に当然気が附いて、了承の合図に頷いてみせた。
「行こ、」
と、悠宇君はせあらの手を握る。二人は閲覧室を出て、温室に入った。
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