1:ケーキ! ケーキ! ケーキ!

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「あの行き倒れの人、寝てたね」  唯衣子のことである。せあらは頷いた。 「ここ、静かだもんね」  悠宇君はたれのたっぷりかかった肉団子を苦心しながら箸で取り、口に入れた。せあらも葱としらす干しの入った卵焼きをふんだんに味わう。 「ケーキが好きだから、ケーキ屋さんの前で体が動かなくなるって、どんな仕組みなんだろう」  面白いな、と、悠宇君は顎を突き上げて、ずり落ちてくる眼鏡を直しながら、云った。  二人が閲覧室に戻ると、唯衣子が起きた。自分が何処にいるのか判らない様子で、辺りをきょろきょろと見回した。口の端からは(よだれ)が垂れていた。ようやく記憶が繋がったのか、頭を振ると、再び本を読みはじめた。しかし相変わらずはかどらない。ちっとも次の本に移る気配がない。大丈夫かな、と、せあらはついつい心配してしまう。
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