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それから唯衣子は、閉館時間まで図書館にいた。彼女が気になったのか、自分の店を閉めた晶良さんが様子を見にきて、彼女に訊ねた。
「どう、この図書館。気に入った?」
「はい。居心地はとても良かったんですけど……、」
唯衣子はがっくりと肩を落とす。
「全然、読めませんでした。私、もともと読書の習慣がないんです」
やっぱり、と、せあらは心の中で呟いた。
「本は、家に借りていっても良いんですよね?」
唯衣子の問いに、せあらは頷いた。
「頑張って、家でも読みます」
そう云うと、唯衣子は本を持って帰っていった。よほどくたびれたのか、足元がややふらついていた。
「あんまり根を詰め過ぎないと良いけど」
晶良さんは神をひと睨みして、去っていった。
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